(2023年5月1日 更新 : 2023年1月のWHOの推奨更新を受け、日本における歯磨剤に含まれるフッ素の推奨濃度が変更されています。当ブログでも推奨濃度の変更を行いました。)
お子さまの歯磨き粉は何のために使うのかご存知ですか?
汚れを落とすためではなく、実は歯磨き粉に含まれるフッ素を歯に取り込むために使うのです。
様々な商品があるものの、どれを選んだらよいのか、そしてどうやって使ったら良いのか、とても分かりにくいですよね。
今日はおすすめの歯磨き粉と、その使用量について詳しくお話ししていきます。
乳歯であれ永久歯であれ、歯はとても柔らかい状態で口の中に生えてきて、3年ほどかけて徐々に硬くなっていきます。
そのため、最も虫歯になりやすいのは、歯が生え始めてから2〜3年の間であると言われています。
一方で、生えて間もない歯は柔らかいがゆえにフッ素を取り込みやすいことも分かっています。
つまり、フッ素の効果を最大限発揮させるには、
「歯が生えたらすぐに使う」
「新しい乳歯や永久歯がどんど生えてくる生後6か月~13歳頃までは継続的に使う」
ということが大切です。
具体的にどのようにフッ素を利用すれば良いのか?
前回の「虫歯予防に効く「フッ素」って何?」の記事でもお話ししたように、日本においてフッ素を手軽に利用する方法は以下の二通りです。
・ご自宅で低濃度のフッ素入り歯磨き粉を利用する
・歯科医院で高濃度フッ素塗布を行う
(フッ化物洗口という、うがいをする方法もとても効果的です。ただ、うがいが出来る年齢にならないと使えないこともあり、今回は省略しています。)
1~3歳までの間に、高濃度フッ素塗布と歯磨き粉の使用を合わせて行った場合、高濃度フッ素塗布だけを行った場合と比べて、就学児のむし歯の減少率が約65%となることが明らかになっています。
このような研究結果からも、両方を合わせて使用することが虫歯予防に効果的であることが分かります。
では、本題の歯磨き粉についてです。
まずは大前提として、うがいができない時期に使用するのはジェルタイプが良いでしょう。
ジェルタイプの方がお口全体に伸ばしやすいですし、透明なので付けた状態でも歯が見えやすいです。
白いペーストタイプは着色汚れが落ちやすいというメリットがあるものが多いのですが、うがいができないとざらつきが気持ち悪いかもしれません。
着色汚れは、歯医者さんの歯ブラシで磨けば簡単に真っ白になりますので、そこは気にしないで大丈夫!
市販品の多くはフッ素濃度950ppmです。多すぎても少なすぎても適切な効果が得られませんので、保護者が使用量を管理できる場合にお勧めです。
WHO推奨濃度よりも低いものの、ついつい多めに使用してしまう方や、お子さまが飲み込む量が心配な方向けです。
うがいをしたり唾を吐きだしたりできないこの時期は、歯ブラシにちょんと付けるような少量でOKです。
赤ちゃんに歯磨き粉を使用するのに抵抗がある方でも、この量を見ていただければ少し安心できるのではないでしょうか?
6歳以上ではフッ素濃度1450ppmの使用が推奨されていますが、子ども向けの味はまだ少ないため、フッ素濃度950ppmの歯磨剤を多めに使用するのがおすすめです。
また、うがいもきちんとできるようになると思いますので、着色の気になる子は研磨剤の入ったものを使用したあとにうがいをすると良いでしょう。
ただし、大人でも同様なのですが、うがいは少量の水で一回だけにして、フッ素が歯に残るようにしてください。
多くの商品がある割には、適切な濃度・使用方法が分かりにくい歯磨き粉。歯磨きグッズの中で、一番選びにくいかもしれません。
もしどれが良いのか迷われたら、いつでも「さんかく歯科」へご相談ください!
仕上げ磨きの方法はこちら
〈参考〉
佐久間汐子 他
乳歯う蝕に対するフッ化物歯面塗布とフッ化物配合歯磨剤の複合応用
口腔衛生学会雑誌55:567-573, 2005.
日本口腔衛生学会フッ化物応用委員会 編
フッ化物応用の科学 第2版
口腔保健協会, 2018.
4学会合同のフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法
一般社団法人 日本口腔衛生学会
公益社団法人 日本小児歯科学会
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
一般社団法人 日本老年歯科医学会, 2023.